台湾・8:ツアーのお茶セミナーで茶葉は買うべからず!(ついでにお気に入りの「奇古堂」の話)

さて、大雨の保安宮の後も連れまわし観光は続きます。
というか、旅行会社としては保安宮などじゃなくて、こちらに連れて行きたいんですよね?次の行き先は「お茶セミナー」です。

これ、2005年も同じ場所に連れて行かれたのですが、地下にあるだだっ広い部屋に観光客がゾロゾロと連れていかれて、中国茶の淹れ方を教えてもらう、というヤツ。

まあ、セミナーというと聞こえはいいのですが、講師が観光客相手に中国茶(台湾茶)の淹れ方のいろはを教えつつ、そこで扱う茶器や茶葉がどれだけ素晴らしいかを延々語って洗脳…うにゃむにゃ、という、まあ、その手のヤツね。

で、こういう講師の人は日本語がうまい。ペラペラです。弁舌巧みにお客を楽しませてその気にさせます。
皆さん結構楽しそうに話を聞いて、写真を撮りまくってます↓。で、私はその姿を写真に撮るという(笑)

茶葉を大量に買っていた人も結構いたなあ…。

でもまあこれは要するに、セミナーの名を借りた土産物屋ですから、ここで売られているお茶は一般的な価格より割高ですし、はっきり言ってさほどおいしくもありません。(2005年になんとなく買ってみたお茶は、結局ほとんど飲まずに処分することに…。私としたことが!ぶっちゃけ、横浜中華街の台湾茶専門店で買った茶葉の方がおいしいです)

自分でお茶屋さんに行くのが面倒とか、何でもいいから手っ取り早くおみやげがほしいという人には良いかもしれませんが、せっかくなら自分で台北市内のお店に行った方がいいんじゃないかな、と個人的には思います。
(あ、でも上海では、この手のツアーで行った先で気に入った茶葉を買いました。中国の街中のお店が信用できるかどうか分からないので、安全策をとったわけ 笑)。

話が少々それますが、私の場合、初めて中国茶に触れたのが、これまた初めて行った香港でして。その時はこの手のツアーのセミナーではなく、自分でフラッと入った茶芸店でした。

そこは小さいけれどそれなりに高級なお店だったのですが、店番をしていた店員さんは、広東語のわからない私にも困った顔一つせず、身振り手振りで椅子に座るように促し、工夫茶の作法に則りお茶を入れてくれたのです。

まだ見慣れなかった茶盤や、かわいらしい小さな茶器、店員さんの優雅なふるまいを、うっとりと眺めていたのを覚えています。
そしてその店員さんの、媚びるでもなく偉ぶるでもない、ただ「これが私の仕事ですから」とでもいうような自然な応対が印象的でした。
それ以来、香港に行くたび茶芸店に足を運ぶようになったわけですが…。
(ただしその後、香港の茶芸店もどんどん変わってきて、工夫茶の作法を見せてくれるお店も減りました。また、香港のお茶より台湾のお茶の方が口に合うことがわかり、今は香港の茶芸店には行かなくなっちゃったな)

話を台湾に戻しますが、こういうツアーのセミナーには、そういう「感動」がない(笑) まあ、おみやげ屋さんですから仕方がありませんけどね。でも、「売りつけよう」というパワーだけがやけにみなぎっているので、ちょっとね(苦笑)

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さて、せっかくなので、私が好きな台北の茶芸店の話を。「奇古堂」という小さなお店です。

このお店、2005年に宿泊したホテルの中に入っていたのですが、台北ではよく知られた茶芸店のようです。
でも、有名だから良いというわけではなくて。
何が良いって、このお店の御主人は、お茶に対して並々ならぬ熱意を持っていて、「中国茶は、使用された農薬を凝縮して飲むことになるので、茶の栽培には極力農薬などを使用せず、大量に茶葉を使わずすむよう、少量でおいしく淹れられる方法を」というポリシーを持っているんです。

ですから、ここの茶器はとても小さい。

これ↑は奇古堂で買った急須と茶器ですが、本当に小さくてかわいらしい形をしています。もちろんこだわりの茶葉も売っています。他のお店より高めですが、少量で味が出るので、結果的には安くつくはずです。

そしてもう一つ、このお店「奇古堂」をお勧めするわけは。
このこだわりの店主は、日本統治時代に日本の教育を受けた、「かつて日本人だった人」なのです。

店主の使う日本語は、いまどきの日本人より正しいほどです。試飲したお茶の深い味わいに、旦那と二人で「複雑な味がするね」と話していたら、「複雑、というのは良い意味の言葉ではありませんね」と突っ込まれ、慌てて本意を説明したという…(苦笑)
そしてその佇まいは、祖父世代の日本人そのもの。思わずこちらが襟を正したくなるような、凛とした雰囲気があります。(態度もちょっと上から目線だしね 笑)

正直なところ、この2005年に訪れた時には、台湾の歴史について「かつて日本が統治していた時代があった」という程度しか知りませんでした。だから、誇らしげに日本語を使う「トーサン世代」の人たちの気持ちをわかっていなかった。
その後私が、台湾について多少なりとも知りたいと思うようになったのは、今思えばこの店主が最初のきっかけだったのかもしれません。

ちなみにこの店主、日本にもちょくちょく来ているようで、雑談の中で「吉祥寺には○○という茶芸店があって(※その当時はありましたが今はありません)、私もよく行きます。仲間がいます」などと言われてビックリしました(笑)

せっかく台北に来たのなら、土産物セミナーではなく、こういうちゃんとした茶芸店で、おいしい台湾茶を買い求めてみてはいかがでしょうか。

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