台湾・10:忠烈祠に祀られているのは

台風で休館の故宮博物院を出た後も、定番連れまわし観光はまだまだ続きます。

お次は、やはり「ツアーの台北観光といえばここ」の、忠烈祠。戦争のために命を落とした英霊を祀る施設で、日本でいえば靖国神社にあたる場所です。

で、忠烈祠といえば、衛兵の交代式でしょう。

ここにいる衛兵さんたちは、バッキンガム宮殿の衛兵よろしく大門(正門)や大殿の前で直立不動で、微動どころか瞬きさえしません。その様子だけでも見もの(といっていいのかなあ)なのですが、一時間ごとに行われる衛兵の交代式の、大門から大殿につづく長ーい参道(というのかな?)を一糸乱れぬ動きで行進していく様子は圧巻です。
ということで、今回の旅行記の例にもれず、ここでもまず2005年の写真で予習しましょう。

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このときはちょうどいい時間に忠烈祠に到着したので、交代式の様子を見ることができました。
まず画面の後ろに見える大門から、画面手前の大殿に向かって、衛兵たちがガシャン、ガシャンと、まるで機械仕掛けのように行進してきます。

まるでレールのような茶色い線↑は、毎日毎時ごとに繰り返される衛兵の行進でできたものなのだとか。
大門側から見るとこんな感じ↓。彼らの周りを観光客が取り囲んでいます。

こんな至近距離で観光客に囲まれて、彼らは一体どんな気持ちなのかなー、などと余計なことが心配になります(笑)

で、参道の中ほどで、ちょっとしたデモンストレーション↓があったりもします。銃を使ったライフルドリルってやつです。

こんな調子で進んでいくので、時間がたっぷりかかります(笑)

一方こちら↓は、大殿の前の衛兵たちです。

こんな感じで向かい合わせに立って、ピクリともしません。

ガイドさんの話によれば、この衛兵さんたちも最初は相当大変らしいのですが、しばらくすると、動かないことにも瞬きをしないことにも慣れるのだそうです。

こういう軍人さんたちの所作は、人間っぽさがなくなればなくなるほど相手に威圧感を与えますよね。その究極まで行っちゃったのが、こういう「動かない護衛」なんでしょうかね。いやしかし、コワイというより「妙」な感じもしたりして…

で、そういうしているうちに、大門から行進してきた交代の衛兵たちがようやく大殿前に到着です。
ガシャン、ガシャン、と、ロボコップな感じです。

もちろんそそくさと交代したりはせず、十分もったいつけて、ロボコップ歩きです。

で、交代のセレモニー。

ここでも、銃を使ったドリルが行われます。これはもう、デモンストレーションというか、観光客向けのパフォーマンスのような印象です。

ちなみに忠烈祠の衛兵になるのは、陸・海・空軍のエリートなんだそうです。

そして、交代した衛兵たちは、再びガシャンガシャンと、今度は大殿から大門まで行進してくるというわけです。

ぬぉー、大変だ…。これを一時間ごとにやってるのかぁ。

とまあ、2005年は衛兵の交代式をしっかり見ることができたのですが。

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さて、2010年。台風が通過した直後です。

台風が接近すると公共施設は休みになる「台風休日」は、ここも例外ではありません。当然本日は休みです。
でも、このツアーはH.I.Sですからね。

台風直後でも、何も見るものがなくても、↓門の中にさえ入れなくても、ちゃんと行きます(笑)

そうして皆で、締め出された大門の前で、写真を撮りまくるという(笑)

あ、私も同様にして撮ったから写真が残っているわけですねど!

で。本題に行きましょう。
タイトルの「忠烈祠に祀られているのは」ですが。

まず日本統治時代、ここには護国神社がありましたが、その場所に、戦後中国からやってきた国民党が忠烈祠を作ったのだそうです。現在の忠烈祠は1969年に作られた新しいものなのだとか。

でね。
現在ここに祀られているのは主に「1911年の辛亥革命や抗日戦争(日中戦争)で命を落とした英霊」なんだそうですが。

「えっ?」って思いません?

台湾は1895年から1945年まで日本が統治していました。当時台湾の人たち(現在の本省人)は日本国民であり、中国本土の辛亥革命とは関係ありませんし、まして日中戦争で日本と戦ったはずもありません。

つまり、ここに祀られているのは、中国本土で戦死した中国人であり、もともと台湾にいた本省人ではないのです。(現在は、戦争に限らず国のために尽くした人も祀られるようになったそうです)

日本と戦って命を落とした中国本土の人たちを祀る場所が、戦時は日本だった台湾に作られたわけです。で、今そこに、状況をよく知らない日本人が大挙して訪れ、衛兵の交代式の写真をとりまくっていたりする…(のは私です、ゴメンナサイ 汗)。

この様子を、本省人はどんな気持ちで見ているのかなあ。彼らが望んで作った場所ならともかく、そうではないんですからね。
外省人にとっても「?」じゃないですかねえ…。(バカだねーとか思ってるかな…)

なお忠烈祠は、中正紀念堂同様、本省人は行かないという話です。
そりゃ、そうだよなあ…。

そういう場所だと知った上で、あえて見に行くならいいのですが、知らずに行くのはちょっとアレだなあ、と、複雑な気持ちになったわけです。ハイ。

★台湾旅行記2010・目次