バリ・12:マッサージ店とちょっとアレな日本人

えーと、この写真↑も、話題には直接関係ありません。サヌールで見たブーゲンビリアです。南国っぽい!

さて、話はちょっと戻って二日目の昼間の話。

サヌールの街を散策中に、マッサージのお店が目に入りました。
道から少し奥まった店舗は入り口がガラス張りで、そこそこ清潔そうな店内が見えていました。

で、ワルン・ワポでご飯を食べてホテルに戻る途中、再びその店の前を通り過ぎようとしたとき、旦那が「フットマッサージを受けてみようよ」と言いだしたのです。

えー、飛び込みでマッサージ?でも最終日にも予約しているんだけど…と躊躇したのですが、
「だって、メチャクチャ安いよ、フットマッサージなら、60分で30,000ルピアだよ」と。

30,000ルピア…?って、300円!?60分!?や、安っ!

普段なら、どういうお店か分らないままの飛び込みは躊躇するのですが、この安さと、他のお客さんが大勢入っていた安心感もあり、そのまま入ってみることにしました。

店内にはマネージャーらしい若い男性が一人と、マッサージ師(というのかなあ)の若い女性たちがわんさか(笑)
この女の子たちはやけに人数が多く、その時間に仕事がない子たちは店の前でたむろしておしゃべりしています。(こういうところがアジアっぽいよなあ)

マッサージ用の席は、入り口そばの椅子(マッサージ用の)4,5台の他に、カーテンで仕切られたベッドが8台くらい?あるようです。フットマッサージは通常椅子らしいのですが、満席ということで、私達はそれぞれベッドに案内されました。

で、あまり説明もないままマッサージ開始。技術的には特に上手でも下手でもなく、ただ結構力が強くて痛いマッサージ(笑)でした。アロママッサージのような気持ちよさではなく、むしろ指圧っぽいタイプで…イ、イタイ…

思いのほか痛いマッサージに顔をゆがめている私をよそに、マッサージ師の女の子は、おそらくいつもそうなのでしょう、隣のベッドとの間にかかったカーテンを少し開け、隣の女の子とペチャクチャとおしゃべりを始めました。

あ、バリもか。

接客中のおしゃべりは、香港でもありますし、シンガポールの安い店もそうでした。高級店でなければ接客に対する姿勢も、おおらかなのでしょう。
でも日本では、いくら安くてもこういうことはないよなあ…と思いつつ、私はただただ痛さに悶絶していました。

——-

やがて徐々に痛さにも慣れ、少しずつウトウトとしてきたとき、ふと日本人の会話が耳に入ってきました。

声の主は中年の男性(印象は団塊世代)と、若い女性二人、他に中年の女性がいたかもしれません。
手前の椅子に座っているらしい彼らは、ベッドに人がいることを知らないのか、やけに大きな声で話していましたが、その内容がちょっとアレでして。

その男性は、英語で「お給料はいくらなの?」と。
それも、相手のマッサージ師の女性が言いたくなさそうなのに、かなりしつこく。

なんなんだ、このおっさん…

おそらく、このお店の料金のあまりの安さに驚いて興味を持ったのでしょう。
でも相手が日本人なら、嫌がる相手に給料をしつこく聞きますかね?
常識のある大人ならしないでしょう。海外だから気が緩んでいるのだと思います。でも「海外だから」は免罪符にはなりません。

もう、やめろよおっさん!とイライラしつつ、話の経緯に耳をそばだてました。

女性は、最初ははぐらかそうとしていましたが、面倒くさくなったのか、そのうちに自分の収入を答えました。
するとその男性はことさらに大きな声で「やっすいなあ」と。そして、自分が偉くなった気分らしく、やけに上機嫌でワハワハと笑っています。

いや、確かに安かったんです、日本人にとっては。
でもインドネシアでは、そのマッサージ師さんの収入が(多分)とりわけ低いわけでもなく。
単に日本の円が、インドネシアのルピアに対して高いというだけ。
おっさん個人が金持ちなわけでも偉いわけでもない。むしろ、相手の給料を聞いて突然偉そうになって浮かれているのは、日本ではそうではない証拠でしょう。

そういう浮かれ気分が必ずしも悪いとは思いません。旅行なのだから、そういう気分を束の間楽しむのもいいでしょう。でも、あまりにもあからさまな態度がカッコ悪すぎる。

で、もっとアレだったのが、そばにいるらしい若い女性たちでした。
今度は日本語でしたが、「え~、安ーい!そのお給料なら、私でも払える~!」「日本で雇って毎日マッサージしてもらおうよ~」と。

もう、アホか。
いや、もちろん冗談でしょうけど!冗談じゃなかったらアホ過ぎる!

バリニーズの女の子たちが物価の違う日本に来て、現地と同じ金額で働けるわけないでしょうに。部屋代や食費やその他もろもろの生活費を、誰がどうやって払うんだ、と。それともあなた達が彼女たちの生活すべてを全て世話したうえで、プラスして給料を払うってか?

いや、いいんですよ、「そのお給料なら、私でも払える~!」と思っても。
でもその大声と、突然偉そうになる態度は、聞いているだけでも恥ずかしすぎる。

あ~。この人たちと同じ国の人間だとは思われたくない
どうか彼らが私の施術が終わる前に店を立ち去りますように…。

——

結局彼らは、私達がマッサージを終える前に立ち去ったようで、顔を見ることはありませんでした。
でも、旅慣れていない感じでしたから、きっと同じホテルだったんでしょうね。

店を出た後で、旦那もほぼ同じ感想を口にしました。
「あの人たち、みっともなかったね」と。

こういう私たちを、気にしすぎと思う人もいるかもしれません。
また相手はバリニーズですから、おそらく日本語はほとんどわからないでしょう。
でも、態度は相手に見えるし、言葉はわからなくても感じます。

少なくともこの場合、単に私達がたまたま日本に生まれたというだけで、自分自身の力で財力を得たわけではありません。突然居丈高にふるまう理由などないのです。そこを勘違いをするなよ、と。
むしろ、鎖国していた日本をここまで成長させた、明治維新以降の先人達に感謝しろよ、と。(飛躍しすぎ?笑)

海外で遭遇した日本人の態度にこんなにイライラしたのは、一時間300円という日本では考えられないサービス料に、私自身が後ろめたさを感じているからなのだと思います。なんだかもうしわけないなあ、と。

ずるずると書いているうちにオチがなくなりましたが、結局私はリゾートで色々な人に傅いてもらうような滞在は向かないのでしょう。

リラックスしきってマッサージ師さんに体を預けている西洋人の女性を見つつ(彼・彼女らはサービスされるのに慣れてますよね)、私は結局どこまで行ってもいろんな意味で日本人なんだなあ、と再認識した一時間でした。

2021年追記
この旅行から10年、状況はずいぶん変わってきているでしょうね。
今やアジア人旅行客が「物価が安いこと」を理由に日本を訪れるのですから、日本人がアジア諸国に旅行に出かけても、このときの「ウハウハおっさん」みたいなことは言っていられないかも。

★バリ島旅行記2010年目次