バリ・09:ちょっと意外なケチャックダンス鑑賞

さて、タクシーをチャーターしてサヌール近郊へケチャックダンスを見に行くことになったわけですが、バリ島では毎日様々なバリ舞踊の公演が行われているそうです。
ただし、会場の多くは芸能の村ウブド。また質も内容もウブドが優れているのだとか。

ただし、当日思いつきでウブドへ行っても演目は毎日変わるため、見たい内容が見られるとは限りません。

今回行ったバトゥブラン村付近にはバリ舞踊の公演会場がいくつかあり、午前中はバロンダンス、夜はケチャックダンスが毎日どこかの会場で見られるそうで、ツアー客が多く訪れるようです。
ま、逆に言うと、観光客向けの会場ということなのかも。

私達が今回訪れたのは、Stage Uma Dewi という会場で、周りには目立った建物がありません。これからウブド方面へ向かう、あるいはウブド方面から帰ってきた観光客たちをぞろぞろと連れて行くのに便利かもしれませんね。

中に入ってみると会場は意外と広く、ステージをコの字型に囲むように観客の席が配されています。野球場を小ぶりにしたような感じです。

到着したのは公演が始まる30分以上前だったのですが、中に入ると、すでにお客さんが待っていました。団体客なのかな?大部分が日本人のようです。
そのせいか、チケットを買うと日本語による解説ももらうことができました。

ケチャックダンスはもともと呪術的な踊りだったそうですが、現在の公演はインドの古代叙事詩「ラーマヤナ」の物語を取り入れたストーリー仕立てになっています。ラーマヤナの物語がわかったほうが、より楽しめるというわけです。
まあ、私はそれに気付かず、公演が終わってから「あのシーンはこういう意味だったのか!」状態だったわけですけど…。

さて、公演時間が近づいてきたところで舞台に灯りがともされましたが、その後はしばらく変化なし。
何か案内があるわけでもなく、なんとな~く、時間が過ぎていきます。

日本の公演では、開演時間が迫ってくると会場やステージの様子もそれに従って色々変化がありますよね?照明が落とされてきたり、案内のアナウンスがあったり。
でもこのときは、時間が過ぎても特に何もなく。

んん?いつどうやって始まるんだ?と首をひねりだした頃。
唐突に、男性たちの声が響き出しました。
なんだなんだ、と思っていいたところで、ステージの真ん中から、ドドドドッと男性たちが。

皆腕を上にあげ、掛け声とともに体を左右に振って踊りながら、ステージ上に整列します。
男性が一心不乱に掛け声をかけながら踊っている様は、ちょっと異様で不思議な雰囲気です。

ちなみに、翌日ガイドしてくれたバリニーズのガイドさん(若い男性)に聞いたところ、ケチャックの掛け声は「ケチャッ」ではなく「チャッ(ク)」なのだそうです。それが重なるうちにケチャッ(ク)と聞こえるのだとか。

まあそれはさておき、ぞろぞろとやってきた男性たち、しばらくすると舞台に座るのですが。

あ、れ??

ガイドブックには
上半身裸の男性50~100名が火の回りに円陣を組み、チャチャッ、チャチャッと奇声を発しながら体を左右にゆすり、踊る
とあります。

えーと、1,2,3,4…

30名。
つまり、一般的な人数より20名は少ない、ということですね。

座りながら手を挙げて踊っている面々を見ると、あまりまじめに踊っていない人もいます。かなり歳がいっている人もいます。彼らは、いわゆるプロの踊り手ではなさそう…。

なんとな~く感じたのは、彼らはこの近郊のフツーのおじさんたちなのではないかということ。観光客に見せるために、毎日誰かしらバイトで駆り出されるのではないかと。
(翌日、前出のガイドさんに聞いたところ、バリでは学校でケチャックを習うのだそうです。だから、とりあえずは誰もが踊れるってことですね)

そんなことを考えつつ、若い人、年配の人、あらゆる人が集まった30人の踊りを見ているうちに、真ん中の割れ門から今回の主役たちが登場しました。

あのバリ舞踊独特の、腰や腕、指の動きでやってきます。
この人たちはさすがにプロなのでしょう。

物語の登場人物たちが真ん中でストーリーを展開させている間、30人のケチャ男(?)たちは、時に静かに待機し、時に激しく踊り、時に主役たちを取り囲み…
ケチャックダンスというからには彼らが主役かと思いきや、彼らは「背景」的な存在のようです。

もちろん、彼らの踊りや掛け声がこの舞台を盛り上げているのは間違いないのですが(この掛け声は、人数が少ないとはいえ独特の迫力があります)、それでも主役はやはり、登場人物たちです。

途中に子どもの舞踊や(これはすごかった!)ファイヤーダンスなどもあり、旦那はとても楽しんでいたようですが、私は、うーん、どうかなあ… 思っていたほどのトランス感がなかったというか。
やはりケチャ男たちの人数が足りなかったのが、今一つ「ケチャックダンスを見た!」と満足しきれない一因かもしれません。

一方で、こういう公演を私達観光客が見ることが地元の人たちの仕事にもつながっているのなら、それはそれでいいことだと思います。今回の入場料は一人800円。それを考えれば、十分いいものを見せてもらったと満足できる内容でしょう。

でも、次にケチャックを見に行くのなら、やはりウブドで見てみたいというのが本音です。

ちなみに私は、ハワイのフラを見ても、ムームーを着て優雅に踊る現代フラの「アウアナ」より、神に祈りをささげる古典フラ「カヒコ」のほうが好きなのです。そういう嗜好もあっての今回の感想ですので、念のため。

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