香港・22:蓮香楼・愛すべきオヤジの園1(飲茶)

香港3日目。
本日の朝は、旦那が今回一番楽しみにしていた飲茶のお店、蓮香楼(リンヒョンラウ)へ。

香港と言えば飲茶、飲茶と言えば香港。といっても、食べられればどこでもいいというわけでもなく、最近はお店を選んで行くようになりました。

どういうお店を選ぶのかと言うと、まず、ワゴンで点心を売り歩いているお店
以前はこうしたワゴンのお店が珍しくありませんでしたが、今はお客が食べたいものを注文し、その都度作るお店が多いのです。
もちろんその方が、好きなものを出来たてで食べられるというメリットがあるのですが、それではちょっと面白くない。
飲茶と言えば、点心名をワアワア叫びながらワゴンを押してくるおばちゃんを呼びとめ、積み上げられた蒸篭を見せてもらって選ぶというのが楽しい、というのが私の個人的な好みです。

次に、気取っていない、ローカルっぽいお店
飲茶は広東料理のレストランでやっているので、高級なお店でも、大規模なレストランでも楽しむことができるのですが、あまり赤やら金やらでピカピカしたところよりも、地元の人たちがのんびりくつろいでいるようなお店がいい。

そしてもちろん、おいしいお店
この三つを兼ね備えるのが上環と中環の間あたりにある昔ながらの茶楼、蓮香楼なのです。

ただし。初めての香港、初めての飲茶という方にはお勧めできかねます。
というのもね、ここ、ホントにローカルなんですよ。

とにかく、オヤジ度数が高い!
観光客以外はほぼオヤジと思ってよいでしょう。

で、店に入ると、他のお店なら店員さんが席に案内してくれるのが普通ですが、このお店はそれもない。高速道路のフードコーナーのように、お客が勝手に空いている席を見つけて座らなければならないんです。それも、当然相席で。

人気店なので、朝ちょっと遅くなると席はすでに埋まっていて、空席を待つお客さんが店内のあちこちに立っています。それも皆さん、次にどの席が空きそうかを虎視眈々と狙っている。この状況は…初めての人はきっと圧倒されてしまうでしょう。(それ以前に、どうしたらいいかわからないと思います!)

1925年創業とあって、店内は天然レトロ(?)で、特に不潔ではありませんが清潔という感じでもない。店員さんは愛想がなく(実際は必要十分なサービスをしているんですが、日本の丁寧なサービスに慣れている人は面食らうと思います)、食器の片付けもガンガンガチャガチャ、とにかく香港っぽい。

さらに、おばさんがワゴンを押して厨房から出てきた直後がすごい。
冒頭の写真はもう一段落した後で、観光客らしいお姉さんが蒸篭を開いてもらっていますが、ワゴンが出てきた直後はこんなものではありません。
皆さん、ワゴンが回ってくるのを行儀よく待っていたりはしないんです。一斉に席を立ってワゴンを取り囲み、押し合い圧し合いの大騒ぎ!そうしないと、人気の点心は売れ切れてしまうので、みんな必死なんですよ~(笑)

でも、私はこのお店が好き(笑)
おじさんたち、お客さんも店員さんも含めて「オヤジたち」が、いい味出しているんですよ。

話は過去にさかのぼりますが、私達が初めてこのお店に行ったのは、朝のちょうど混む時間帯でした。

ローカルルールが全然わからず、ただ周りの状況をから、自分で席を確保しなければならないことは理解したのですが、同じように席を狙っている人も多く、なかなか席が見つかりません。
どうしたらいいかわからず途方に暮れていたところで、ふと近くの席のおじさんが、私達と目をあわせ、「こっちだよ」とでも言うようにうなづいています。
おじさんに促されるままそちらに行くと、その円卓の中で席をちょっと詰めて、二人分の席を空けてくれるではありませんか!

そう、このおじさんたちは、日ごろからこうして助け合って(?)いるようなのです。それも、どこから見てもよそ者の私達に対しても。

私と旦那以外は一同オヤジという大きな円卓に座り、席が見つかってホッとしたのと同時に、ちょっと肩身が狭いような感じです。
すると、私達を呼んでくれた強面のおじさんが、今度は英語で私達に話しかけてきます。「どこからきた」とか「香港は何回目だ」とか、「香港はどうだ」とか、「この店は好きか」とか…、そんな簡単なことばかりですが、何かとコミュニケーションを取ろうとしてくれます。そして、その円卓の他のオヤジ(多分それぞれ他人)に、広東語で私達の返事を説明しているのです。

ここに来るとその都度、こうしたちょっとしたやり取りがある。
実際彼らが広東語で何を言っているのかはわかりませんが(アホな日本人カップルだ、と言っているかもしれないですが 笑)、でも、こういう相席も、全く知らない相手との会話も、無愛想で強面な香港オヤジの印象とは相反する温かさを感じて、嬉しくなります。

おじさんたちは、いつまでも新聞を読んでいたり、点心も頼まずにお茶ばかり飲んでいたりと、それぞれに時間を過ごしているのですが、そういう姿もなんだかいとおしい(笑)
きれいな広東料理のレストランとは一味違う、昔ながらの光景なのだと思います(昔は飲茶は男性だけが楽しむものだったそうですよ。だから、昔ながらのこのお店は女性が少ないのかも)。

さて、お店の様子はこの辺にして、そろそろ肝心の点心の話を…、と行きたいところですが、長くなってしまったのでまた次回!

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