「ホテルの窓から見えるもの」で書いた、夜編です(笑)
夕食を終え、旦那は眠りにつきましたが、私にとってはまだ寝るには惜しい時間です。再び窓の外を見ると、夕方にぎわっていた通りに、なにやら作業車が来ているようでした。
何をするんだろう?こんな時間に作業をするんだな… というか、人がいない時間だから作業ができるのかな。
夜の街は、昼間とはまた違った雰囲気です。面白くなってまたあちこちにカメラを向けました。すると、明るい時には見えなかったものが色々見えるんですよね…
といいますか、部屋の中が見えるんですよ!
香港の人は、外から見られることをあまり気にしないのかな?もちろんカーテンを閉めている部屋もありますが、そうでない部屋は、テレビ番組の内容までわかりそうなくらい見えちゃうんですけど。
窓が小さいところはまだいいとして、窓が広いところはすっかり丸見えです(といいながら、見るなよ 笑)。といっても、窓が広いところは生活感がなかったので、住居ではないのかな?見えても気にしないのかも。
手前のビルとその奥のビル、それぞれの明かりの中に人がいて、生活や仕事があるんだなあ、なんて眺めていました、が。
途中でふと、さらに奥のほうに小さな無数の光が見えていることに気が付きました。上の写真でいえば左上のあたりです。
この小さな光は、目で見てもぼんやりしてほとんど見えないのですが、写真に撮ると、その存在がはっきりわかるのです。
なんだこれ… と、上の方を写してみると、
えっ…
ビル?目ではよく見えないけれど、遠くのビルが写っているんだ。
何棟ものビル… しかもすごく高い。まだてっぺんが写っていない。私がいるホテルだって結構な高層階なのに、ずいぶん遠くにあるのにこんなに高く見えるなんて。
目では見えないビルの存在に少々動揺しながら、さらに上に向けて撮っていくと、
・・・
カメラの液晶モニターにこのビルが浮かび上がったとき、思わず鳥肌が立ちました。
大気汚染でぼんやり霞んだ空気の向こうに、想像をはるかに超えた超高層ビルが立ち並んでいる。すぐそばに見える下町の人たちの生活とは桁違いの、巨大な何かがある。…その光景に、なんともいえない恐ろしささえ感じたのです。
(後でわかりましたが、この巨大ビルは2010年に完成した「環球貿易廣場」でした。高さ484m、香港一の超高層ビルです。昼間にみても「高っ!でかっ!」とは思いましたが、恐怖心までは感じなかったな。下町とのコントラストが強すぎたのでしょう)
えも言われぬ気持になって、もう一度、すぐそばの様子に目を移しました。
最初に見た作業車は、ホースで水を撒きながら、まだお仕事中でした。
以前、香港人のガイドさんとの会話の中で「香港は、値段が途方もなく高いものもありますが、安いものもたくさんあります。お金持ちでなくても、ちゃんと生活できるんです」と言われたことがありました。日本に留学経験がある彼女は、日本は物価が高すぎると感じたようです。「香港は所得格差はすごく大きいけれど、誰もが生活しやすい街だ」という趣旨の話でした。
かすんだ空の向こうの超高層ビルと、すぐそばで夜間作業をしている人たちの姿を見て、なぜか突然、その言葉を思い出しました。
※これは2011年、今から10年前の旅の記録です